クモマツマキチョウの吸蜜
たった1つのオスのたった1度の吸蜜、たった1人の撮影でした。
今年まだ挑戦できずにいたクモマツマキチョウに会いに休暇をとって信州へ出かけてきました。数年前からずっと気になっていた場所があり、事前に情報いただいたおかげでたどり着くことができました。
この日は時々日が差すものの概ね曇り。山の稜線も雲に隠れてほぼ見えません。陰って風が吹くと薄着で来たことを後悔するような気温でした。
しばらく寒さに耐えていると太陽が現れ、と同時に沢の対岸にオレンジの飛翔が見えました。もう心穏やかにはいられません。しかも目で追いかけていると急にこちら側に飛来したのです。一気にヒートアップして後を追いかけたのですが、全く止まらないうえに足場も悪く、近づけないままに向こう岸へ飛んでいってしまいました。そして日が陰って寒くなり、オレンジを完全に見失いました。
何度かこの繰り返し、時間とともに焦りだけがどんどん膨らんでいきましたが、たった1つのオスのたった1度の吸蜜を撮ることができたのは奇跡的としか言いようがありません。
美しい景色、沢の轟音、誰一人いないなかでのオレンジ… 撮れた瞬間の喜びは一生忘れることがないでしょう。正直ほんとに苦しかったです。
2022/6/17・長野県
